𝐘𝐨𝐮 𝐦𝐚𝐤𝐞 𝐦𝐞 𝐒𝐦𝐢𝐥𝐞…

〜プロローグ〜

…

ねぇ、桜が綺麗だね。

これからもずっとこうして2人で春を迎えられるのかな。

君は笑って頷いた＿＿＿＿＿・・・

…

〜出会い〜

人生は、ひょんなことから進路を大きく変える。

ある晴れた日に私は1人で日向ぼっこをしに公園に行った。

「3億年ぶりの公園気持ち良すぎw  もはや住めるんだがww」

そんなことを1人で呟きながらベンチに座った。

ふと目に入ったのは、、私の隣に腰を下ろす、黒いバッグだった。

「え、なに、忘れもの、、？」

そう思って、バッグに触れた瞬間、

「「確保ニダぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

というクソデカボイスと共に一斉にスーツを着た男たちが集まり、

気づいたら私は取り押さえられていた。

「Aぇっ！？！？　ちょ、なに！？！？」

「お前が売人ニダ！！現場は取り押さえたニダ！！署へ連行ニダ！！」

「は、はぁ！？ありえない話し！！謝れ！謝れ！」

抵抗虚しく、私はされるがまま、警察署へ連れて行かれた。

その後のことはよく覚えていない。

無実を訴えても聞いてもらえず、なんやかんやで有罪となってしまった！わら

数日経って、私は刑務所に入ることが決まった。

「島根女子刑務所…」

初めての刑務所にわくわく！！していたのも事実である。

浮き足立ったままなんか変なトラックみたいなやつの荷台に乗せられた。

男の人しか乗っていなかったことに若干の疑問も感じたが、まぁ女が私1人だから経費削減なんだろうな〜と、あまり深く考えていなかった。

…この時の違和感を信じるべきだったのかもしれない。

到着した場所は、

「奈良少年刑務所…！？！？」

私が行くはずだった島根は！？！？！？！？

「君、女だよな、！？なんでここにいるんだ！？」

「えっ、えっ、怖い怖い。笑　私のセリフなんだけど！？」

どうやら、初刑務所に浮かれ、私が乗る車を間違えてしまったらしい。

「まぁ、別に島根でも奈良でも変わんないから君ここのままでいいって。

ここ文字通り男しかいないけど、部屋も行動も別にするから。」

本部との電話を終えた警察官がそう告げた。

あっ、そんな感じでいいんだ。

そんなこんなで、ゆる〜く、私が身を置く刑務所が決まった。

…

「君は今日から緑房の一員だ。だが、行動は君だけ異なる。一応の区分だと思っていてくれればいい。部屋は後で案内する。他の連中とは離れているから余計な心配はしなくていい。」

「ありがとうございます。」

「何か今聞きたいことはあるか？」

「あの、、、トイレ行きたいんですけど、、、」

色々と入所手続きを行なっている最中、私は尿意と戦っていた。

「女子トイレは、、どこもここからは距離があるな…」

「無理無理無理やっぱ無理♪ 耐えられる自信がありません！！」

「しょうがない、ついてこい。」

そう言って、監守は近くの男子トイレに私を連れて行った。

中を確認し、「誰もいない。外で見張っているから済ませてこい。」と言った。

掃除の行き届いた和式トイレで用を済ませ、手を洗い入口にいる監守の元へ戻った。

が、しかし。

「Aぇ、、！？」

監守の姿が見当たらない。辺りを見回してみたがどうも気配がない。

かと言って、ここへ来て数時間、元いた場所へ戻る道も分からない。

「どう、しよう………」

戸惑って1人でトイレ前をウロウロしていたそのとき、

「大丈夫？笑」

後ろから、男性の声がした。

振り返ると、赤いつなぎを身に纏った笑顔の男性がそこには立っていた。

振り返った私の顔を見るなり、その笑顔の中に驚きが混じったのを、私は感じた。

「道、分かんなくて、」

彼が何か言葉を発する前にそう言った。

「…あ、、どこに行くの？笑」

「なんか、受付みたいなとこ、です///」

「何照れてんの？キモ。笑」

2人で歩き出した。

彼は笑顔で、ずっと無言だった。

私の胸だけが、うるさかった。

途中で向こう側から監守が来るのが見えた途端、彼は真顔になり直立不動になった。

「あぁ、すまない。すぐ戻ってくるつもりだったんだがな。」

監守のことなんて、どうでもいい。

「ここまで連れてきてくれたのか、18番」

「ﾊｲｯ!!!」

「あ、ありがとうございました、。」

「18番はこのまま真っ直ぐ元に戻るように。」

「ﾊｲｯ!!!」

赤いつなぎの彼は、回れ右をして、歩いてきた道を戻った。

頬が熱かった。

赤い背中が遠ざかっていく。

「待って！！！！！！！」

気づいたらそう叫んでいた。

「君の、名は、、！？」

彼は振り返った。

「俺は、、赤房の 「そのまま黙って戻れぇぇ！！！余計な私語は慎めぇぇぇ！！！」

え笑

監守、躁鬱？笑

「ｼﾂﾚｲｼﾏｼﾀ!!!!」

彼は戻っていってしまった。

監守が私に何か話しかけているが、右から左へと流れて行った。

世界から音が消えたようだった。 

私は、小さくなっていく赤い背中を、

ただ、見つめていた。

…