𝐘𝐨𝐮 𝐦𝐚𝐤𝐞 𝐦𝐞 𝐒𝐦𝐢𝐥𝐞... 𝟒

…

連れてこられたのはタイヤのブランコがポツンと置いてある、裏庭だった。

「ここ、俺らの基地なんだ。」

笑顔のまま、彼は言った。

月明かりに照らされる彼の笑顔は

いつもより優しくて儚くて

なんだか照れてしまった

「そ、そうなんですね、、。」

私の曖昧な返事のせいで沈黙が生まれた。

夜風が涼しかった。

「ねぇ、俺らが出会った日のこと、覚えてる？」

おもむろにエガオが話しかけてきた。

忘れるわけがなかろう。

汚い男子トイレから私を案内してくれた。

「覚えて、ます、、」

「そう、か、笑」

エガオも、覚えていてくれたのか。

そう思うだけで、私は泣いちゃいそうだよ。

「俺、もっと君と話したい、仲良くなりたい！」

変わらない笑顔のまま、エガオはこちらを真っ直ぐ見た。

「俺、エガオ！よろしくな！」

差し出される右手に私は応えた

「はい！私は、、」

言いかけたその時、

「自由時間は終わりだ！！部屋に戻れ！！！」

監守の声が響いた

「ﾊｲｯ!!!!!!」

エガオは笑顔のまま赤房へと駆けていった。

赤い背中が遠くなっていく。

出会った時と似ている光景だった。

あの時と同じように、また、呼び止めたら……

そんな考えは、監守の声と夜風に飛ばされてしまった。

私も緑房へ戻ろうとした。

不意に後ろを振り返ると、監守ではない誰かが陰からこちらを見ていた。

誰なのかは分からない、いつからいたのだろう。

陰は私に気づき、サッと消えて行った。

月だけが、全てを知っている。

そんな夜だった。

〜 再会 〜

次の日、私は監守に呼び出された。

「お前に面会希望者が来た。

名前は、松田元太。」

声が出なかった。

誰よりも会いたかったはずの人。

「拒否権はあるが、どうする？」

拒否する理由なんてどこにもない。

私は久しぶりに彼氏と、

元太と顔を合わせることになった。

〜

私の前に立つ監守が、銀色のドアノブを捻った。

アクリル板の向こう、座っていたのは、

紛れもなく、元太だった。

「っ………」

元太が大きく息を吸い込んだ。

「げんにゃん…………(⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̭ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)❤︎」

意識もせず、こぼれた。

パイプ椅子に座り、久しぶりに元太と面と向かい合った。

凛々しい眉毛に、大きめの鼻。

薄い唇に、長めの前髪。

最後に会ったのはいつだったか。

私がここに来る前、

冤罪で捕まって、たらい回しにされたときよりも、少し前か。

一週間ちょっと前のはずなのに、

ずいぶん昔のことに感じる。

元太は何も変わっていなかった。

強いて言えば、少しやつれただろうか。

「元気、だったか、？」

一つ一つ確かめるように元太は言った。

「なんとか。そっちは？」

「俺は大丈夫、、って言ったら嘘になる、。」

「え？？」

「お前に会えなくて、寂しくて苦しくて、死にそうだった。」

「げんにゃん……… (⌯˃̶᷄ ⁻̫ ˂̶᷄⌯)♡」

元太のこういうところが、本当に大好きだ。

少し黙った後、元太は口を開いた。

「俺、知ってる。」

「え？」

「お前が、誤認逮捕だったってこと。」

後ろの監守のパイプ椅子が、少し軋んだ。

「変わってやりたい。できることなら。」

静かに、でも熱く、彼は呟いた。

元太のこんな顔、初めて見た。

目には少し、涙が浮かんでいるようだ。

きっと、私も同じ。

そう考えてたら、一粒のNamidaが私の頬を伝った。

「俺、ぜってぇお前を助ける。こんなの間違ってる！！！！！」

「元太………」

元太の声が強くなり、握りしめている拳は赤くなっていった。

「俺だけはお前の味方だから。

絶対迎えに行くから。」

そして、目を閉じ、息を大きく吸う元太。

必ず行くからそこで待ってろ〜よ〜〜〜♬」

元太の見事なアカペラにNamidaが溢れた。

今日もハイウエストがかっこいいね。

「ありがとう、。待ってる。」

…

面会時間が終わり、

大きな愛に包まれたまま私は面会室を出た。

私には、元太しかいない。

絶対この場所と別れを告げてやると心に決めたとき、

脳裏に浮かんだのは、赤いつなぎ

この場所と別れるということは

彼とも会えなくなる。

私は、なんで、大好きな人と会った後も

彼のことを考えているんだ、、、

気の迷いだと言い聞かせて、頭に残る赤色を

どうにか忘れようとした。

…