𝐘𝐨𝐮 𝐦𝐚𝐤𝐞 𝐦𝐞 𝐒𝐦𝐢𝐥𝐞… 𝟐

〜新しい生活〜

刑務所の朝は早い。らしい。

6時起床。

諸々準備をして、7時には集会がある。

そして明日は初めての集会！

消灯時間、薄い布団に入り、私は胸を膨らませていた。

どんな服を着ようかな、と思ったけど、この緑のつなぎしか無いんだったわ。わら

ふと、今日のことを思い出した。

あの、赤いつなぎの、笑顔の素敵な人。

あの人、名前、なんだったんだろう。

赤いつなぎ、赤房なのかな。

歯並び、悪かったな、。

明日の集会、会えるかな、、。

思い出して、胸がきゅんとなった。

誤魔化すように、別のことを考えた。

「…そういえば、アイツ元気かな、」

自分に言い聞かせるように呟いた。

刑務所生活1日目は、ドタバタすぎてすごく疲れた。

全てを振り切るように目を閉じていたら、いつの間にか眠っていた。

おやすみなのだっ！(//∇//)

…

ベルの音で目が覚めた。

うるっせぇ…と起き、自分が刑務所にいることを思い出した。

なんか着替えたり、なんか顔洗ったり、なんかご飯食べたりした。

途中ですれ違う人たちは皆、驚きの表情を浮かべていた。

そりゃそうだ、こんな美人が少年刑務所にいるのだから。

「外へ出ろ！」

扉の外で監守の声がした。

緑のキャップを被りながら部屋を出た。

少し歩いて、緑房の列の最後尾へ加わった。

今から、集会だ。

講堂には、緑房の他に、赤房・青房・黄房・黒房の人たちが集まっていた。

黄房だけ語呂が悪いことは気にせず、ひっそりと前の人の影に隠れるように集会の時間を過ごした。つか監守長、下唇出過ぎてて話に集中できん笑笑 無理笑笑 しぬ笑笑

初日の集会はなんとか乗り切った。

と思った。

部屋に戻る途中のことだった。

赤房の列とすれ違った。

先頭、明らかに別の国の血が入っているゴツい男の、後ろ。

…いた。

彼がいたのだ。

心臓が止まった。

目が合った。

すれ違う直前、

真顔だった彼は、少し、微笑んだ。

部屋に戻っても、頭の中は、彼のことでいっぱいだった。

…

〜友達〜

…

刑務所生活の中には、色んな時間がある。

運動の時間、労働の時間、学習の時間…

集会の後。今から運動の時間。

庭に連れて行かれた。

庭には青房と赤房の人たちがいた。

緑房と時間が違うので他とは被ることがあるらしい。

なんじゃそりゃってな笑

もちろん、彼もいた。

先頭を歩いていたゴツ男たちと何やら話していた。

さっきの微笑みが脳裏をよぎる。

彼を遠目に見つつも、女1人だし日向に出たくないので、日陰で監守からもらった縄跳びでもしようと思った。

Ooh I just wanna make you happy

あ〜もう！ 笑ってほしい(ooh happy,happy)

忘れちゃった笑顔も　大丈夫　ちゃんと取り戻して(ooh happy,happy)

歌いながら縄跳びを飛んでいたら、誰か近づいてきた。

「…おもしれー女」

男は笑みを浮かべ、声をかけてきた。

「だ、だ、だ、誰でしゅ、誰ですか、////」

「俺は、青房の…。あー、ホストって呼ばれてる。」

「ホ、ホスト…？」

「っておい笑　呼び捨てかよ笑　俺の方が先輩だぜ？笑」

「あ、朝からごめん！謝らせてくれ！」

「まぁ、いいよ。こっち来ないの？」

「1人がいいので…」

「ふーん、ところでさ…」

ホストはさらに近づいて日陰に入ってきた。

「君、男いんの？」

「彼氏が、います。ここの、外に。」

「じゃあ今は会えてないんだ〜。」

ホストはゆっくりと私に近づいてきた。

目が合ったまま、私は気圧されて後ずさりし、壁に背中が当たった。

「ねぇ、俺の女にならない？」

シンプルに無理だったけど、びっくりして声が出なかった。

知らないうちに、目は遠くにいる赤いつなぎの彼に移っていた。

それに気づいたホストは、私の視線の先を追った。

「ふーーん、君、エガオが好きなの？笑」

「エガオ、、？エガオさん、っていうんですか、？」

ホストはニヤっとして一歩私から離れた。

「じゃあさ、」

「俺がエガオのこと、君に教えてあげるよ」

「…え？」

「だから、友達になろうか」

「…え？」

「じゃあ、またいつか。」

「…え？」

そう言ってホストは青房の仲間の元へ戻っていった。

「変な男… 気象予報士みたいな顔して…」

青房は危険だ、そう思った。

…

「Hey!! You!! どこを見てるんだ！」

「なんだ、エガオ。あの新入りの女が気になるのか？」

ダイケンはいつだって鋭い。頭が良いからなのか、？

「あの女、ほんとは誤認逮捕だったらしい。警察側も知ってて刑務所にぶち込んだらしいぞ。まぁ、本当はちゃんと女子刑務所に行く予定だったらしいけど。」

情報屋の情hoの早さにはいつも驚かされる。

「Hey!! You!! 今は脱獄についてだけ考えてれば良いんだYO!!」

「そんな、ジョー。女のことなんて考えてねーよ笑」

そうだ、女のことなんて、考えてない。

今は、脱獄のことにだけ、集中しよう。

朝のことは、気の迷いだ。

目が合ったのは、たまたまだ。

…